プロジェクト・ライフサイクルとリスク。プロジェクト・マネジャーの腕の見せ所

プロジェクト・コストおよび要員数(*1)、変更のコスト(*2)と来て、プロジェクト・ライフサイクルの特性の最後は、リスクです。

(*1)プロジェクト・ライフサイクルの特性。形で理解し、言葉で言う。コストとの関係の場合
(*2)プロジェクト・ライフサイクルの特性。変更コスト。二次曲線になるそのワケ

リスクはPMBOK体系の知識エリアの一つとして論じられていますので詳しくはそこで学びますが、ここでは簡単に定義しておきましょう。
日常的に使ってる意味とは少し違いますので。

リスクとは将来の振れ幅の大きさです。
モノサシは色んなものが考えられますが、パーセント(%)や金額で表すことが多いようです。

例えば灯油18リットルの価格が今現在1,600円として、この冬の間に1,400円~1,800円までの変動が予測されたとします。
このプラマイ200円、パーセントで言えばプラマイ12.5%がリスクの大きさです。
仮に現在、この冬に使う分すべてを購入すれば、リスクはゼロになります。
(灯油を転売する目的ならリスクの大きさは変わりません)

 

横軸は例の如くプロジェクトの経過時間。
縦軸がリスクの大きさ。

さて、どんな曲線を描くでしょう?

繰り返しますが(*)、べき論です。
プロジェクトのあるべき姿。
あなたのプロジェクトではありません。

(*)この記事ではなく。コストおよび要員数との関係の記事で言及しています。

ちなみにおさらいすると、先の2つは、
コストと要員数が台形。
変更コストが、右上がりの二次曲線でしたね。

答えは反比例的な曲線。

そう言われても・・
という方のために今回は図示しましょう。
こんな感じです

ただし、これも繰り返しますが(*)、PMP試験で図は見せてくれません。
言葉で表現されます。

(*)この記事ではなく。コストおよび要員数との関係の記事で言及しています。

プロジェクトが持つ独自性(*)という特性によって、リスクはプロジェクトの開始時に最大です。

(*)プロジェクトの独自性。人や組織によって異なるものさし

そして、作業が完了する毎に、フェーズを経る毎に、次第にリスクは減っていきます。

これは、初めて行く場所に行く時のことを考えてみればいいでしょう。
家を出るときには到着時刻をプラマイ30分ぐらいで予測していても、目的地に近づけば、プラマイ5分ぐらいの精度で予測できるものです。

 

リスクの低下に伴って上昇するもの

上のグラフに書いていないんですが、リスクの低下に伴って逆に上昇していくものがあります。

それがプロジェクトが成功する確度。
この場合の成功は成果物が完成して依頼者の手に渡り、プロジェクトが終わるということです。
確度というのは確実性の度合い。

説明の必要もないと思いますが、リスクとの関係で抑えておいてください。

 

PMBOKのメッセージ

このように、「リスク、リスク」と騒がなくても、プロジェクトを粛々と前に進めていけばおのずと減っていくのがリスクなんですが、PMBOKのメッセージは反比例的な曲線になっているところにあります。

つまり、遠慮せずに最初にガバっと減らす。

マイナスに振れるリスク要因が顕在化したとき、後になればなるほどリカバリーが難しくなります。
その観点からもリスクは先に潰しておくに越したことはありません。

自分のプロジェクトにおけるハイリスク要因は何か?
それはどのフェーズで顕在化するのか?
そのフェーズをもっと前に持ってこれないか?

プロジェクトマネジャーはこれを真剣に考えて計画に反映しないといけません。
プロジェクトマネジャーの腕の見せ所です。

 

リスクはゼロにならない

上のグラフを見ると、リスク曲線の右端と横軸との間にまだすき間があります。

プロジェクトが終わるとき、グラフは横軸に接するのでしょうか?
つまりリスクがゼロになっていないといけないのか?という話です。

ほとんど場合、ゼロにはなりません。

故障しない機械はありませんし、バグのないソフトウェアもありません。
ミスをしない人間もいないからです。

グラフを見て分かるとおり、プロジェクトの終わりに近づけば近づくほど、リスク低減の費用対効果は落ちていきます。

わずかなリスクを潰すために多大なコストが掛かるわけです。
先ほど、リスクはゼロにならないと言いましたが、「経済的に」と言ってもいいかもしれません。

このことから、どれくらいのリスクを許容してプロジェクトを終わらせるのかは判斷の産物となります。

そして、大切なことは残存リスクとしっかり向き合うということです。
リスク要因が顕在化した場合を想定したプランを策定した上でプロジェクトを終わらます。

もっともマズイのは、テスト件数を消化したからといって、あるいはリハーサルが上手く行ったからといって、あたかもリスクがゼロになったと勘違いして終わるプロジェクトです。



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