プロジェクト・ライフサイクルの特性。変更コスト。二次曲線になるそのワケ

では前回(*)に引き続き、別の切り口からプロジェクト・ライフサイクルを見てみます。

(*)プロジェクト・ライフサイクルの特性。形で理解し、言葉で言う。コストとの関係の場合

横軸は同様に経過時間。
縦軸は、計画に変更が生じたときに掛かるコスト、略して変更コスト。

これがどう変化するかと言うと、右肩上がりの二次曲線的な(下側が丸い)カーブになります。

開始は原点ではなく、縦軸上です。
どんなに変更コストが小さくても、計画を修正するためのコストはゼロにはならないからです。

もしコストと呼ぶことに違和感があるのなら、時間と言い換えても構いません。

ただし、時間というのは作業人数や、外注を利用したりで大きく変わるのに対して、コストはそうしたことを包めても変わらぬモノサシだということは知っておいてください。

あと、グラフの意味なんですが、”もし”計画に変更が生じた場合、その時そこに掛かるコストということです。

プロジェクトにおける変更コストが二次曲線的に積み上がっていくのがセオリーではありません。

 

さて、形が理解できたとして、PMP試験の論点は「なぜそうなるのか?」です。

 

変更コストが右肩上がりになる理由

なぜ、変更コストはプロジェクトが進むにつれて上がるんでしょうか?

ITベンダーや、エンジニアリング会社に勤めている方は体に染み付いていることかもしれませんが、中学生にも分かるようにシンプルに。

答えは、プロジェクトが進むにつれて完成部分が広がっていくから。

実装フェーズはもちろん、計画フェーズにおいても、変更はすでに完了した部分に対して影響を与えます。
その範囲が広がっていけば、それに応じて修正コストがアップするのは当たり前です。

仮に変更が軽微なものだとしても、完成した範囲への影響は精査しないといけません。
変更が起案されたとき、変更を反映するか?、それとも却下するかを検討しますが、仮に却下された場合でも、変更の影響調査の工数はプロジェクトの進捗に応じて増大します。

 

厳密に言えば、変更原因の潜伏期間に比例

実は、プロジェクトが進むに連れて変更コストが増大するというのは、ちょっと語弊があります。

プロジェクトの終盤でも、昨日決めた計画に対して今日変更することにそれほどのコストは掛からないからです。

でも、プロジェクトの初期でも3ヶ月前に確定した計画を変更しようものなら、多大なコストを要するでしょう。
3ヶ月の間に計画に基づいて色んな作業が済んでしまっているからです。

つまり、変更コストは単純な全体進捗に比例するのではなく、変更箇所が策定された日から、変更が起案された日までの期間の長さに比例するというわけです。

変更のトリガが息を潜めていたわけで、これを変更が潜伏していると言います。
変更コストはこの潜伏期間に比例するというわけです。

もっとも、PMP試験向けのことを言うと、全体進捗か、それとも潜伏期間かの区別を問うようなことはありません。

「変更コストはプロジェクトの進捗に応じて大きくなる」、と書いてあっても間違いではありません。

 

二次曲線的に増大するワケ

二次曲線的にコストアップするということは、プロジェクトが進むに連れて、進捗増加分に対するコスト増加の度合いが加速度的に激しくなっていくということです。

なぜでしょう?

これは実際の皆さんの仕事を思い浮かべるといいかもしれません。

例えば、パンフレットを作るとして、印刷所への発注前の修正であれば、ワードやパワーポイントをちょちょっといじれば済みます。

でも、発注してしまったらそんなわけにはいきません。
さらに、すでに印刷が上がっていたら、あるいはもう顧客に配布してしまっていたら・・

このようにプロジェクトが後になればなるほど、関係者の範囲が広がっていくために、変更発生のタイミングが少し違うだけで、掛かるコストが格段にアップするわけです。

これが二次曲線的になる理由です。
端的に言うと、プロジェクトが進むにつれて影響の質が違ってくるということです。

さて、PMBOKはこの特性で何を言おうとしているのでしょうか?

次は、プロジェクト・ライフサイクルと変更コストの関係を踏まえてプロジェクト・マネジャーが持つべきマインドについて解説します。



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