PMI倫理・職務規定。4つの価値で示す高潔な理想像。試験で演じるバカ正直


PMI倫理・職務規定の重要性(*)が分かったところで、その中身のポイントを押さえておきましょう。

(*)PMI倫理・職務規定。汝、読まずしてPMPを受験することなかれ

まず構成。

4つの価値

遵守すべき事柄は4つの項目に分かれています。
これを4つの価値基準と呼んでいて、

  • 責任 responsibility
  • 尊重 respect
  • 公正 fairness
  • 誠実 honesty(あるいはintegrity)

この4つ。

つまり、私たちは常に、

  • 責任を果たさなくてはいけない。
  • 公正でなくてはいけない。
  • 尊重しなくてはいけない。
  • 誠実でなくてはいけない。

ということです。

そんなことあらためて言われなくたって‥
なんていう感じでしょうか。

英語は覚えなくてもいいですが、PMP試験では、たとえば選択肢に、尊重を尊敬、公正を公平、誠実を正直などと書いてあるからと言って、間違いだと判断しないようにしてください。
日本語訳のワナ。PMP試験の本番の得点力は必ず下がる

 

理想基準と必須基準

行動規範とはいっても、「しなければならない」とか、「してはいけない」という書き方ではありません。

すべて「私は〇〇します」、あるいは「私は〇〇しません」調。

決してやらされているわけではなく、主体的にそうするんだということを周囲の皆んなに約束しているわけです。

 

4つの価値基準それぞれについて、ルールは2つのレベルに分かれています。

一つが理想基準。
できれば達成して欲しい基準で、努力目標とされます。
ただ勘違いする方も多いんですが、達成が努力目標だとしても、努力することは義務ですから。

もう一つが必須基準。
必ず遵守しなければならない基準です。
遵守しなければ懲戒処分の対象とされます。
強制退会や資格剥奪などが考えられますが、どこまで機能しているかは不明です。

ただ、ルールごとに、それが果たして理想基準なのか?、それとも必須規準なのか?、この区別をPMP試験で問われることはないでしょう。

試験対策的には、全て遵守しなければならないと押さえておけば結構です。

では4つの価値のポイントを順番に見ていきましょう。

責任

どっかの会社のキャッチじゃありませんが、結果にコミットするということ。
その際、自分の利益は後回し。
クライアント・ファーストです。

機密情報の保護責任もこの領域です。

注意が必要なことと言えば、自分の経験とスキルの範囲内で仕事を受けるということ。
スキルでカバーできないときには、いきなり断る必要はありませんが、そのことをステークホルダーに伝えた上で判断を委ねます。
それでも依頼されたのであれば頑張ればいいわけです。

 

尊重

人はもちろん、資源や環境など、あらゆるものを尊重し、大切に扱い、無礼な態度を取らないこと。
その国や地域の習慣を尊重します。
あるいは違う意見にも耳を傾けることなどです。

パワハラという言葉は使われていませんが(power harassmentは和製英語です)、地位や立場を利用して相手の自由な意思決定に介入することは避けなければなりません。

とはいっても、プロジェクト・マネジャーは意思決定者です。
民主的な意思決定一辺倒ではスケジュールは守れません。
ボスとしての必要な強制力は発揮する。
組織はそれをプロジェクト・マネジャーに認めて権限委譲しているわけです。

結局どっちなんだ?
こう思うかも知れませんが、ケース・バイ・ケースです。
出題者はどっちの振る舞いが適切かをケースで示しているハズです。

 

公正

先入観を持たず、偏見を排して、客観的に判断して意思決定するということです。
スタッフを評価する際には職務の成果、
発注先を決めるときは、提案内容や価格で評価します。

さらにその意思決定過程の透明性を確保します。
同じ流れで、贈収賄は厳禁です。

客観的に判断するということは、すなわち職務と関係のない属性を考慮しないということです。
これはあらゆる差別を拒否することにも繋がります。
人種、性別、国や地域、etc.
今、流行りのLGBTという言葉は使われていませんが、性的指向(嗜好)も評価してはいけません。

ちょっと注意が必要なのはお国柄。
たとえば一律に年齢を条件にすることは年齢差別です。
定年退職制度は日本の慣行です。
さらに、履歴書に顔写真を添付するのも日本だけで通用する常識です。

 

誠実

正直さと押さえておいた方がいいかもしれません。
嘘をつかないというのは当たり前だとしても、あやふやで、誤解が生じる意思伝達や振る舞いに気をつけ、自らも真実を理解することに努めます。

良い報告は誰でも伝えようとしますが、ここで強調されているのは悪い方。
報告することによって、自分が不利益を被るような場合です。
そのときこそ、なおさらタイムリーで正直な報告を心がけないといけません。

言うことが当然過ぎるって?
食品偽装や、検査データ改ざんのニュースを見てないんですか?
彼らは悪党でもない普通の善良な人たちです。

 

忘れてはいけない2つの役割

4つの価値を通じて求められている共通の役割があります。

一つはPMIに関係しない他者にも遵守させるように仕向け、4つの価値の普及に努めるということです。
マネジャーであればスタッフにも。

さらに周囲の振る舞いにも関心を持ち、4つの価値から離れた振る舞いに対しては、拒絶し、抗議し、断固とした態度を取るということです。

もう一つの役割は報告義務です。
明らかな違反者については、関係するステークホルダーに報告しなければなりません。
嫌な役回りですが、見て見ぬふりをしないということです。

 

PMBOK®ガイドとの整合性とリアルとの兼ね合い、そしてPMP試験対策

書いてあることはいちいちごもっとなことばかりですが、PMBOK®ガイドとのコンフリクトもなきにしもあらずです。

これは矛盾しているということではなくて、何事にも限度というものがあるということです。

いくらクラアント・ファーストとは言っても、契約に基づくのはこれもまた当然のことです。

ムリな要求を受け入れて自分が疲弊することをPMBOKは良しとしません。
だからこそ変更マネジメントが強調されているわけで、訴訟ですら解決手段の一つとしてPMBOKは認めているのです。

また、悪い情報ほどタイムリーかつ積極的にとは言っても、PMBOK®ガイドは、「情報伝達は戦略的に」とも言っています。
無用な混乱を起こさないように考慮することは、これまた当然だと言えるでしょう。

要は何が論点になっているのかを把握することです。
PMP試験の問題で、PMBOK®ガイドの指針が論点なのに、PMI倫理・職務規定を思い浮かべながら回答すると正解できません。

設問に論点は明示されていませんから、受験生が何が論点かを判斷しないといけないわけです。

 

融通が効かないバカ正直を演じよう

リアルプロジェクトでは、本番システムにバグがあっても、その機能がほとんど使われないのであれば、顧客に内緒で修正して事なきを得るなんてことはあることです。

もしこれをわざわざ顧客に伝えようとするスタッフがいれば困ったちゃんです。

でもですね、PMP試験において、PMI倫理・職務規定が論点となっている場合、その困ったちゃんが正解になる可能性があるわけです。

ごく当たり前のことが書かれているPMI倫理・職務規定。
だからと言って、PMP試験で簡単に満点が取れるわけではないのです。




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