日本語訳のワナ。PMP試験の本番の得点力は必ず下がる

PMP試験がアメリカの試験(*)ということに関連して、押さえておきたいことは試験問題の翻訳の影響についてです。

(*)グローバルスタンダードと言う名のアメリカのアメリカ人によるPMBOKとPMP試験

基本、試験は世界共通の英語による試験です。
ですが、受験申請の際に言語支援の選択をすれば翻訳文を表示することができます。
(つまり英文と日本語訳の両方を参照できるということ)

日本の受験生がこれに頼るのは、ほぼお約束で、日本語訳を参照しながら回答していくことになります。
が、誤訳、間違った翻訳が受験者からちらほら報告されています。

もっとも、それが合否に影響を及ぼしていたのは昔の話で、さすがに今はそんなに気にするレベルではありません。

言い方を変えれば、気にしないレベルのものは依然としてあるわけです。

直訳モードの読み辛さ

まず、キレイな文章ではありません。

なんて言ったらいいんでしょう?
PMBOK®ガイド日本語版をもうひと回り読み辛くした感じです。

ま、しかしこれは、原文を正確に伝えようとする余り、意味が変わらないように直訳に徹していると思ってポジティブに捉えましょう。

いずれにしても、題意の把握に少し時間がかかるということは想定内にしておいてください。
日本で市販されている問題集はこうしたことまで反映されていませんから、本試験では戸惑うかもしれません。

私も、試験時間の半分ぐらいまでは慎重を期す余りギリギリの進み具合で焦ったことを覚えています。
次第に慣れてきて、結局は20分ぐらい余りましたけどね。

それよりも悩ましいのは、直訳されていることで、逆にニュアンスが変わってしまうことがあるということです。

ネイティブが読めば、顧客が怒って要求していると受け取る文章が、日本語訳では事務的に依頼をしているとしか読み取れないなんていうことがあります。

微妙なニュアンスまでを伝えるのが名訳とすれば、直訳はそれを伝えないどころか、変えてしまうわけです。

単語レベルでは、英語と日本語は必ずしも一対一で対応していません。
ですから、意訳では複数の英単語に適当な日本語一語を当てたり、逆に、一語を複数の語句で言い換えたりしますが、直訳はそんなことはしません。
単語ごとの和訳を日本語の語順に並べ替えるだけです。

さらにその語順にしても、並べ方で解釈が変わってきてしまうのですが、直訳では考慮されません。

例えば、
「先月スタッフが書いた報告書を読んだ」

これ、読んだのはいつだと思います?
二通りの解釈が出来ますよね。
でもきっと英文では明確です。

もし試験で日本語訳に違和感を覚えたら、原文を見てみるというのも手ではあるんですが、何しろ時間が限られています。

和文と英文の両方を参照するというのは英語の腕に覚えがある方でもせいぜい数問まででしょう。

ていうか、それ以上出来るほどの英語力があれば、最初から日本語訳に頼らず英文だけで解いた方がよっぽど効率的です。

 

和訳には揺れがある。重要用語も例外ではない。

一般的にもそうですが、翻訳には揺れがあるということ。
「てにをは」の差は上で述べたニュアンスの差となるわけですが、困ったことにPMBOK用語や専門用語の和訳に揺れがあります。

PMBOK®ガイド日本語版の用語の字ヅラがPMP試験とピッタリ一致しているとは限りません。

例えば、「product」。
PMBOK®ガイド日本語版ではカナで「プロダクト」と表記されるのが普通ですが、試験では「成果物」と表記される場合があります。

PMBOK®ガイドでは、成果物はdeliverablesの和訳で、プロダクトとは明確に使い分けられているのですが、それは最近の話。
以前の版では混在していて、PMP試験は今だにそのときの名残で混在しているわけです。

当然、それに応じて、「product」を含むすべての用語の和訳が揺れることになります。

プロダクト・スコ-プ、あるいは成果物スコープ。
プロダクト・スコープ記述書、あるいは成果物スコープ記述書。

別の記事(*)で、試験対策において用語の字ヅラを正確に覚える必要はない、その理由は試験でそこまで問われることはないから、と言いましたが、実は問われないと言うよりも、作問そのものが難しいということが分かります。

(*)勉強時間を左右する択一問題を踏まえた準備。選択肢の評価はあくまで相対的

 

試験対策としては、和訳の揺れを想定内として、ガチガチの字ヅラではなく、あくまで用語の意味を捉えるつもり準備しておくということです。
(別段、それが本来の勉強のし方ですが)

ですが、これも程度問題です。
あまり幅広く捉えすぎると、本当に誤った用語の正誤を聞いてくる場合もあるので注意してください。

余裕があれば、PMBOK®ガイドの索引に掲載されている重要用語ぐらいは、日本語と併せて原語(英語)でも押さえておくと、1、2問、得点が拾える設問があるやも知れません。

上では、本試験において和文と英文を見比べることは時間的に不可能みたいなことを言いましたが、気になる設問のみの単語レベルでしたら出来なくもありません。

それに、「成果物」と「プロダクト」が同じだということぐらいは容易に気づくことができても、「代替案」と「フォールバック・プラン」が同じだということまでは、事前に知っていないと気づけないものです。

ネイティブの受験生に比べれば、それ以外の地域、とりわけ日本人の受験生は若干のハンデを背負っていると言えるでしょう。

 

本番に強い人はいないPMP試験

以上、英語に自身のない受験生にとっては不安を煽る内容だったかもしれませんね。

でも、最初に言った、気にするレベルではないというのは嘘じゃありません。
記事タイトルも「ワナ」なんて煽りすぎてしまいました。m(__)m

実際、受験申請ですら四苦八苦するぐらいの英語力のPMPは腐るほどいます。
本試験の際に一度も英文なんて参照しなかった受験生が大半です。

もし落ちた受験生の体験談として、拙訳のことに言及されていたとしても、落ちた原因はきっと別のところにあります。

必要なのはバッファ。
ネイティブより不利だと言うのなら、それを考慮した実力をつければいいだけの話です。

国内の問題集における得点力より本試験の得点力は必ず下がるということを押さえておいてください。

日頃60点台の受験生が受験することはギャンブルですらなく、高確率で不合格になります。
PMP試験では、本番に練習以上の結果は出ません。

P.S.
では合格にはどれくらいの実力が必要か?
体験的に書いてます。
講師のPMP受験体験記その二。一発合格大作戦。超省エネ模擬試験



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