ローリング・ウェーブ計画法(rolling wave planning)とは、計画を反復させることです。
PMBOKが編み出した用語ではなく、情報処理技術者試験なんかでは割と古くから扱われていた用語です。
一種の比喩表現ですが、計画作業をウェーブ、波に形容しているわけです。
じゃ、ローリングとはなんぞや?ということになるんですが、その昔、恥ずかしながら私はいい加減な解釈してましたね。
転がるように、とか(イミフ)。
うねるような、とか(波の修飾としてはアリですが‥)
全然違います。
英和辞典を紐解くと、
rolling
【名】
回転
:
【形】
回っている、回転する
:
〔定期的に〕繰り返す
最後の方に記されて意味がソレです。
一般的にその意味で使われることが少ないということです。
「でも波って、元々定期的に来るもんだろ?」
ですよねえ。
そういう意味ではローリング・プランでよさそうですね。
実はビジネス用語としてずっと前から存在していたのがそのローリング・プランです。
企業で策定されている中長期計画などに採用されていて、例えば5年計画を立てたとして、一年一年見直しを図っていく手法です。
ローリング・ウェーブ計画法もこれと似た意味で、違いの一つは期間のオーダー。
プロジェクトですから、計画を反復させるのは年ではなく、月や週になります。
すなわちローリング・ウェーブ計画法とは、プロジェクトの計画を周期的に反復し、計画を洗練させていくこと。
もちろん、計画だけを反復させるだけでは単なる計画作業の継続です。
そこで、計画と計画、波と波の間に入るのが計画に基づいた実行、実装。
そこからのフィードバックを得て、計画は洗練されていくことになります。
と、何か別の言葉が浮かんできません?
そう!
段階的詳細化。
大雑把には、ローリング・ウェーブ計画法は段階的詳細化の別称という押さえ方でも結構です。
大雑把にはと言いましたけど、では厳密には違うのか?ということなんですが、ちょっと違うんです。
前のエントリで段階的詳細化はコンセプトに過ぎないという説明をしました。
「段階的詳細化。求められるパラダイムシフト。計画は死ぬまで改善し続ける」
コンセプトですから、汎用性があります。
例えばプロジェクト・ライフサイクル・モデルには色んなタイプがありますが、段階的詳細化はそれを選びません。
でも、ローリング・ウェーブ計画法はコンセプトを反映した、も少し具体的な技法として扱われているということです。
実際、プロジェクトマネジメント・プロセスのツールと技法にも採用されています。
技法ですから、段階的詳細化と違ってプロジェクト・ライフサイクル・モデルも選びます。
適用可能か不可能かという議論にまではなりませんが、適用のし易さ、し難さぐらいでしたら論点になります。
当然、従来型のウォータ-・ウォール型には適用しづらい反面、アジャイルやイテレイティブなどの反復型ライフサイクル・モデルにはそのままフィットします。
ちなみにIT分野では長らくウォータ-・ウォール型の開発一辺倒だった時代が続いたため、ローリング・ウェーブ計画法は単なる概念という位置づけだったんですが、テクノロジーがその位置を引き上げました。
WEBやクラウドの登場で開発側がリリースをコントロールできるようになったことで、ローリング・ウェーブ計画法に基づいた反復型の開発が技法として定着したわけです。
ちょっと横道にソレました。
話をPMP試験対策に戻します。
ローリング・ウェーブ計画法が実行・実装を挟みながら次第に計画が洗練されていくと言いましたが、プロジェクトの初期におざなりの計画で実行するわけではありません。
計画から実行・実装に移す際にはその部分に関しては実行・実装に値する詳細な計画でなければなりません。
あくまでプロジェクト全体の計画の洗練度が低いというだけです。
PMBOK®ガイドにはこうあります。
近い将来の作業は詳細に、遠い将来の作業は高いレベルの計画に留まる。
高いレベルというのはWBS(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャ)の階層のことで、大雑把なレベルということ。
間違いないでもらいたいのは、段階的詳細化の産物であるプロジェクトを前に進めるためにはそうするしかないということです。
決して、今出来る計画をワザと先延ばしにするのではありません。
プロジェクトでは詳細化できる範囲とできない範囲はまだら模様であり、詳細化できる部分はどんどん詳細化し、出来ない部分は出来るようになるまで待ちます。
待つといっても座して待つのではありません。
詳細化できる部分を実行に移していくことでフィードバックが得られ、詳細化できる範囲が広がっていくわけです。
本気になったら、講座でお会いしましょう!
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