「のれん」というのは事業価値、business value の一つです。
一般的には企業価値、corporate value の一つなんですが、PMBOK®ガイドに企業価値という単語は出てきませんから、し方ありません。
意味は、営業権とか、信用力とか。
語源は「暖簾(のれん)」です。
ですが、漢字で書かないように。
暖簾と書くと、まさにお店の入り口に掛けられた布になってしまいます。
あくまでそれは比喩表現です。
原語も、goodwill。
決して、shop curtain(ショップカーテン)でも、tapestry(タペストリー)でもありません。
「のれん分け」と言えば、使用人がお店の名前で独立することですし、
「のれんを汚す」と言えば、お店の評判を落とすことです。
いずれも、営業権や、信用力と言い換えられることが分かるかと思います。
暖簾は「のれん」の象徴なんですね。
PMBOK®ガイドが言いたいのは、事業価値には、お金や施設のような有形のものだけでなく、「のれん」のように無形のものがあるということです。
そして、プロジェクトはすべからく、この事業価値を上げることを目指して実施されるというわけ。
プロジェクトって何?、に対するPMBOK®ガイドの解説の一つですが、PMP試験向けにはこれくらい押さえていれば十分です。
さて、
ここからは、試験対策というより、ビジネス用語としてもう少しキチンと押さえておきたい人向けの説明です。
のれんは定常業務によって獲得する
企業の信用力や、ブランド価値というのは、おいそれと得られるものではありません。
のれんは、長年に渡る地道な活動の結果として市場から得られる評価です。
つまり、プロジェクトというよりは、定常業務によって生み出されるものなわけです。
これからすると、PMBOK®ガイドが、「のれん」をプロジェクトと結びつけているのは違和感があります。
もっとも、長い目で見て、企業活動の全てがのれんに繋がっているという捉え方をすれば、一つひとつのプロジェクトだって、のれんの増大に寄与しているというのは間違いではありません。
もしかすると、PMBOK®ガイドもそういう意図で書いているのかもしれませんが、読む側が字面だけを見て、「プロジェクトは、のれんを獲得するために実施される」、なんて言うと、一般的には、何も知らない奴とみなされます。
のれんの会計的意味
「のれん」は会計勘定科目にもなっています。
のれんは無形の資産ですが、金額で表現されるわけです。
このとき、特に「のれん代」なんていう言い方もします。
マスコミのニュースで「のれん」が取り上げられる場合は、ほとんがこの意味です。
PMBOK®ガイドでは、「事業価値は定量化が可能なベネフィット」と書かれていますので、ここは一致する部分です。
ただし、のれんが金額で表現できると言っても、「うちの会社の信用力はいくらだ?」、なんていう検討は普通はしませんし、する必要がありません。
第一、そんな恣意的に資産に計上できるとしたら会計制度が成り立ちません。(なので出来ません)
では、会計処理において「のれん」がいつ登場するかというと、企業買収のときです。
このとき、「のれん」は以下のように定義されます。
「のれん」は、買収される企業の総資産と買収金額の差額。
例えば、買収される企業の総資産が一千万円だとします。
もし、この企業が黒字企業であれば、1千万円では買えません。
値段は1千万よりも高くなります。
だって、仮に、毎年100万円の利益を出している会社であれば、総資産も100万円づつ増えていくからです。
ですから、毎年の利益を当てにして、2千万円で買収したとします。
このとき、買収する企業側の立場で考えると、
現金で買えば、現金が2千万円減ります。
ところが、それで得たのは1千万円の資産しかありません。
見た目はマイナス1千万円の取り引きです。
バランスシート(貸借対照表)では、この1千万円の差額を何かで表現しなければなりません。
これが「のれん」というわけです。
つまり、買収した時点では以下の等式が成り立ちます。
買収金額(2千万円)
= 被買収企業の総資産(1千万円) + のれん(1千万円)
のれんは無形の固定資産としてバランスシート(貸借対照表)に載ることになります。
つまり、話の順序としては、のれんがいくらか?
ではなく、
あくまで企業価値としての買収金額が先に決まり、
買収金額と総資産との差額は一体何なのか?を考えた時、
それは、稼ぐ力であり、すなわち、信用力であり、ブランド力であり、技術力のような、その企業が持つ潜在力、無形の価値だということです。
本気になったら、講座でお会いしましょう!
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