EV(アーンド・バリュー)のプロットのし方。段階的詳細化とのジレンマ


EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)の最初の肝(きも)である、EV(アーンド・バリュー)のプロットのし方を押さえましょう。

【オフィス新設工事のコスト見積り】
フロア工事 300万円
内装工事 300万円
家具の搬入 400万円
———————————
合計 1,000万円

工事が始まってしばらくは、EVはゼロ。
フロア工事が終われば EVは300万円。
その後、内装工事が終われば EVは600万円。
その後、家具の搬入が終われば EVは1,000万円。

こんな感じです。
簡単ですね。
実績に基いて積み上げていけばいいだけです。

注意したいのは、予め見積もった金額をそのまま積み上げるということです。
実際に掛かったコストではありません。

実際のフロア工事は400万円掛かったのかもしれないし、
内装工事は250万円で済んだのかもしれない。

そうであっても、EVはあくまで見積りの300万円を積み上げます。
だって、EVは進捗なんですから。
EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)。金額で進捗を測る意味

たとえば極端な話、フロア工事が思わぬトラブルに見舞われて1千万円かかったとします。
だからって、この時点でEVを1千万とすると、進捗は1千万。
コスト見積りの総額と同じになってプロジェクトは終わっていなければいけません。

合意したコスト総額の見積りがあり、かつ、その要素である成果物の見積りコストを積み上げるからこそ、全体に対する完成度合いの物差しとしてEVは機能するわけです。

つまり、EVMを始めるには以下が済んでいる必要があります。

  1. プロジェクトの成果物の要素分解(*1)
  2. 総コスト見積りと要素ごとのコスト見積り

(*1)要素分解:
PMBOK上、要素分解はスコープ・マネジメントのWBS(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャー)が担います。

要素分解は、EVMの準備のためと言うよりも、成果物を具現化したり、フェーズを決めたり、担当を分けたりするためにプロジェクトでは普通に行うことですから、それをEVMに活用すればいいだけのように思います。

なんですが、ここに一つジレンマを抱えていて、どういうことかと言うと、そもそも、プロジェクトは段階的詳細化だということです。
プロジェクトの初期には大雑把にしか定義されていない成果物を、プロジェクトのライフサイクルを通じて詳細化していくわけです。

EVMで使う要素の詳細度はプロジェクトで決めればいいのですが、EVMを開始したい時点で、希望する詳細化が済んでいるとは限らないということになります。

下位レベルの詳細な要素を使えばタイムリーにEVをプロットできる反面、EVMの開始は詳細化を待たなければならないわけです。

一方、プロジェクト初期の高いレベルの要素を使えば、大雑把なEVMになります。

 

このように、EVMを始めるための条件は、プロジェクトの特性である段階的詳細化との間に矛盾を抱えています。

実際、プロジェクトで適用する際のハードルとなっていて、EVMの普及を阻む一因なのですが、そのことがPMP試験の論点になることはありません。




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