コンティンジェンシー対応戦略だってRBSで考える


前回の記事では、RBSを使用しないと、まぬけなリスク対応策になってしまう例を紹介しました。

その続きです。

悪天候による列車の遅延・運休に対して、飛行機は代替手段になり得なかったわけですが、
では、「天候」というリスク区分に対して、どういったリスク対応策が考えられるでしょうか?

この答えの元が、リスク・マネジメントにおける”予兆”(warning)というキーワードです。

予兆とは、リスクの発生確立が高まることを言います。

台風は、ある日突然やってくるわけではありませんよね。

台風が接近すれば、数日前から天気予報で知らせてくれます。

これが予兆です。

移動当日に台風によって交通機関の乱れが予想される場合、どうしますか?

そうです。
前泊すればいいだけです。

このように、特定したリスクに対して、とりあえずは何の対応策もとらず(*)に、予兆が現れてから対応策を発動させることを、PMBOK®ガイドでは、コンティンジェンシー対応戦略といいます。

(*)何の対応策もとらず:
この言い方はちょっと誤解を生じます。
コンティンジェンシー対応戦略を策定するわけですから。

さらに、前泊するというコンティンジェンシー対応戦略は、本来、「天候」というリスク区分に対するものだったわけですが、RBSを眺めると、カバーできるリスクが「天候」だけではないことが分かります。

前泊すれば、当然、「事故」というリスク区分にも有効です。
つまり、「列車」というリスク区分のほぼすべてを潰(つぶ)すことができるわけです。

さらにさらに、前泊することによって、右側半分の内部要因、このうちの寝坊リスクを大幅に軽減させることが分かります。

だって、5時起きだったのが、8時起きで間に合うわけですから。

このように前泊は非常に効果の高いリスク対応策だということが、これもRBSだからこそ明らかになったということです。

だからといって、
「そっか、大阪に出張するときは、必ず前泊しよう」
とはなりません。

私の場合、自分がプレゼンテンターの場合は、できるだけ前泊します。

だってねえ、プレゼンのテーマがリスク・マネジメントだったりすれば、列車の遅延で遅れたなんていう理由は、ブラックジョークにしかなりませんから。

でも、オブザーバとしての参加や、内輪のミーテングの時は、前泊なんかしません。

前泊するためは、早めに仕事を切り上げて移動しなければなりませんし、宿泊費もかさみます。

用心して前泊するか?
リスクを承知で当日移動するか?

この選択の決め手となるのが、リスクが顕在化した場合(大阪のプレゼンに間に合わないとき)インパクト(影響度)、あるいはリスクの許容度と呼ばれるものです。

 

プロジェクトもまったく同じです。

プロジェクトマネジャーは、組織のリスク許容度と見比べながら、コストアップを受け入れてでも、あるいはスケジュールを延ばしてても事前の予防策を打つのか?

それとも、とりあえずは対策を行わず、兆候が現れてから、対応策を発動するのかを決める必要があるわけです。

ただ、そのときに、リスクの全体構造をにらみながら行う必要があるわけで、このときにRBSが役に立つわけです。




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