RBSを使わないまぬけなリスク対応策


前回の記事ではRBSのメリットとして、テンプレートとしての機能を紹介しました。
予め階層化されたリスク区分に従えば、リスクを漏れなく特定できるというものです。

でもそれって、計画(リスク特定)のために計画(リスク・マネジメント計画)しておきましょうって感じで、今ひとつです。
計画の省力化には役立ちますが。

RBSがプロジェクトにもたらす最大のメリットは、リスク対策の有効性が高まることです。
(PMBOK®ガイドは”最大の”メリットとは言ってませんが)

どうしてリスク対策の有効性が上がるかというと、それは図にしたから。

一つひとつのリスクは、独立しているんじゃなくて、他のリスクと関連しています。
あるリスクが原因となって、また別のリスクが生まれる、みたいに。

こういう関係性は、テキストや表では分かりません。
RBSという図にすることで、これらリスク間の関係が明らかになり、プロジェクト全体のリスクの構造が明らかになるわけです。

では、リスクの構造が明らかになることによって、リスク対応策の有効性が高まるケースを見てみましょう。

例えば、図の左半分の外部要因。
「列車」というリスク区分に対して、飛行機の利用を代替手段として用意しておくリスク対応策があるとします。
列車の遅延や、運休すべてのリスクに備えようとするわけですね。
ところが、このリスク対応策、実にまぬけです。

「列車」の配下のリスク区分に目を移してみます。

左側の「事故」に対しては問題ないでしょう。
しかし、右側の「天候」に対してはどうでしょうか?
飛行機は代替手段になり得るんでしょうか?
列車が運休するような悪天候のときって、高い確率で飛行機も運休しませんか?

つまり、

「列車がダメっだら、飛行機にすればいい」

これは、「天候」に対する対応策にはなり得ないということ。

ターゲットとするリスク区分が違うわけです。
飛行機に乗り換えるという代替手段がターゲットとするリスク区分は「列車」ではなく、その下の「事故」。
ここが、飛行機という代替手段が有効となる位置なわけです。(*)

(*)飛行機という代替手段:
実際は、予めチケットの予約までしておかないと、いざというときのリスク対策として機能しません。
だって、みんな考えることは一緒だからです。
チケットを買って予約しておき、列車に問題なければ、予約をキャンセルする。
ここまでやって、初めて有効なリスク対策になります。
もちろん、直前にキャンセルするためには正規料金で購入しておかなければなりません。
タダでは、リスク対応策は行えないということです。

 

こういうことが、すんなり出来るということ、
まぬけなリスク対応策であることに事前に気付いたということ、これがまさにRBSのメリットです。

もしこれが、リスク区分によって構造化されていない、単なるリスクの羅列だけだと、飛行機への乗換えが、悪天候には無力だということに気付くことはできません。

「いや、普通、気付くでしょ」
などと反論しないように。
身近な例で説明しているだけですから。

また、そう言えるのは、後出しだからです。
実際、私が現役のPM向けにやった研修では、ノーヒントで気付く受講生は一人もいませんでした。

何事も、事が起きて始めて、いたらなさに気付くのは、人の常です。
それが、戦略や意志決定によって外れたのならまだしも、不注意によるポカは避けなければなりません。

RBSは、そういうポカからプロジェクトを守り、リスク対応策の有効性を高めるツールなわけです。

PMP試験向けに、プロジェクトマネジメント・プロセスとの関係を述べておきます。

リスク・マネジメント計画プロセスで、RBSの使用を決めたり、リスク区分によるテンプレートを用意します。

そして、リスク特定プロセスで、実際にRBSを用いて、リスクを挙げ、整理する。

そして、リスク対応計画プロセスでは、その有効性をRBSを活用して検討する。

ということです。




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